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【きらり★vol.3】鳥羽でしあわせな非日常、体験してみませんか? ~ 扇芳閣 社長 谷口 優太さん

 新型コロナウイルス蔓延からしばらく、みなさん最近旅行にお出かけされましたか?ホテルも良いですが、旅館も趣があって良いですよね。
 今回は、三重県鳥羽市にあります扇芳閣 社長の谷口優太さんにお話を伺いました。


1.御社のお仕事、教えてください。

――――どんなおしごと、されていますか。

 現在は旅館として構えておりますが、スタートは1950年に割烹料亭「扇芳閣」として創業しました。伊勢神宮の式年遷宮を機に、多くの方が伊勢志摩を訪れたことから1956年に客室数9部屋の旅館「扇芳閣」を開業しました。
 その後、時代の後押しもあって増改築を続け、1992年には客室数が85部屋の大型旅館になったそうです。ですが、バブル経済崩壊などの難局に直面し、旅館経営をスリム化しよう、という方針になりました。

 そして現在、部屋数を65部屋に減らし、1部屋当たりの面積を大幅に広げることで、子どもたちが安心して楽しく過ごせる旅館に生まれ変わりました。おじいちゃん・おばあちゃん、お父さん・お母さん、お孫さんの3・4世代でゆったりとご宿泊いただけます。

旅館「扇芳閣」は公式noteを運営しています。
https://note.com/senpokaku_001/

2.27歳!の若さで旅館を継いだ理由、継ぐまでにしてきたこととは?

――――どうしてこんなに若くして、旅館を継がれたのですか。
 自分は物心ついたときから、当たり前のように旅館の息子(=5代目)として街に育てられてきました。ですので、そのころから旅館を継ぐことに何の迷いもありませんでしたね。
 早く旅館を継ぐことになったきっかけは私が15歳の時に4代目の父が倒れたことです。その時、改めて「自分が旅館を継ぐんだ」という意識が芽生えました。その後21、22歳の時に今後のキャリアを考え、旅館を切り盛りする母を少しでも楽にしてあげたいという思いから「大学を卒業してから5年で旅館を継ぐ」と決心をしました。

――――旅館を継ぐまではどんなことをされていたのですか?
 「旅館しか知らない旅館経営者になりたくない!」と考え、観光業や経営について広く学ぼうと思いました。そこで、まずは新卒で海外の旅行代理店に就職し、アメリカと日本で働き始めました。

旅行代理店時代。はっちゃけています(笑)

 その後、長野県の小布施町で旅行会社の新規事業立ち上げを1年間経験し、最後の1年3か月はオランダのロッテルダムに留学して、MBAを取得しました。

オランダ留学時代。今でも親交がある方たちばかりです。

 総じてこの5年間では、「人の繋がり」の大切さを実感できました。旅館経営と直接関係のない人たちとも深い話をすることで繋がりを持てたことは大きいですね。今でも当時の人たちと集まり、意見を出し合ったり近況を聞いたりして刺激を受け合っています。

3.はばたく中小企業・小規模事業者300社の受賞、おめでとうございます!

――――受賞の経緯も含めて、当局とのなれそめを教えて下さい。

 最初に職員の方と出会ったのは2021年ですね。「大阪・関西万博」に向けてこの地域にどう誘客するかお伺いしたい、と訪問されたのがスタートでした。そのお付き合いの中で、「はばたく中小企業・小規模事業者300社」に推薦いただき、2023年度に受賞することができました。
 また、コロナの影響を受けている事業者が支援対象となる経済産業省の「事業再構築補助金」を、鳥羽商工会議所に協力してもらって申請したところ、3回目の公募でなんとか採択されました。1、2回目の公募よりも補助金額が多かったので、運命だったと思っています(笑)。

4.「世界中の子育て家族から愛される旅館」を目指して

――――最近の取組みを教えてください。
 
 社長になったのは新型コロナ感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令された時期でした。旅館を一時的に休業することになって大変な一方で、これからの扇芳閣について考える良い機会にもなりました。
 その時考えたのが、「世界中の子育て家族から愛される旅館」で、そのために様々な取組みを始めました!設備投資にあたって補助金も活用しましたが、多額の借金も抱えました。協力してくれた金融機関の方には感謝しかありません。
 
 この「世界中の子育て家族から愛される旅館」を実現するために、おおきく3つのことを実施しました。

➀ リブランディング
 3世代家族の宿泊に対応できるように、3部屋を1部屋にまとめてスイートルームを作りました。その結果、30部屋→10部屋と少なくなりましたが、3世代が安心して楽しめる空間を作ることができました。
 また、1階のラウンジには、子どもが遊ぶプレイスペースと絵本を読む場所を設けて、チェックインの合間も子どもたちが楽しく過ごせるように工夫してあります。

開放的な空間で、子どもたちも楽しく遊べそうです!
おしゃれな雰囲気の中に、絵本がずらっと並んでいました!

 また、宴会場だった場所を思い切って朝食会場のダイニングに改修しました。「大人がゆったりと食事できるスペース」と、「子どもたちと一緒に食事できるスペース」が共存した空間になっています。
 こうした取組みが効率的な人員の配置に繋がり、客単価を3倍以上に増やすこともできました。

ダイニングは椅子、ソファー、お座敷を用意
食事しながら見える景色は最高です!

➁ ツリーハウス 
 都会の子どもたちがなかなか味わえない、自然の遊びを満喫してもらいたくて作りました。

筆者も上りましたが、木の暖かみを感じることができました!

➂ 絵本のクラウドファンディング  
 旅館が絵本?と思われるかもしれないですが、それには理由があります。
 「世界中の子育て家族から愛される旅館」を目指す上で、親と子どもが「一体となって」楽しむ体験が必要と考えたとき、自分が子どもの時に親に絵本を読んでもらった楽しい記憶を思い出しました。その体験を旅館でも、という思いで絵本をつくることを決めました。
 「旅館が絵本をつくる」という初めての取組みを広く知ってもらいたいと思い、クラウドファンディングを始めたのですが、想定以上の多くの方に賛同してもらえてうれしかったですね。絵本と宿泊がセットになっているプランも300~400人ほどにご購入いただきました。

 このような取組みのおかげで、2023年には年間3万人を超える方々にお越しいただけました!

5.これからも、きらり、かがやくために

――――旅館「扇芳閣」にとってのかがやく、'きらり’はなんでしょうか。

 「扇芳閣」にとっての’きらり’は「子どもにとっての『日常』と大人の『非日常』の共存」です。「世界中の子育て家族から愛される旅館」を目指す上で、大人向け、子ども向けと区切るのではなく、家族が一体となって楽しい体験をしてもらえる旅館づくりを心がけています。
 これからもよりたくさんの方々に楽しんでもらえる旅館を目指していきたいです。

みなさんも、鳥羽でしあわせなひと時を。谷口さん、ありがとうございました。

~ ★ ★ 企 業 情 報 ★ ★ ~

★扇芳閣公式note:https://note.com/senpokaku_001/

★【メディア掲載】
[日本経済新聞]旅館再生、30代が新風 リブランディングで高付加価値化:

[朝日新聞]子育て世代に愛される旅館へ 30歳の5代目社長の思い 三重・鳥羽

~~~ 会社情報 ~~~
会社名:有限会社扇芳閣
代 表:社長 谷口 優太
所在地:三重県鳥羽市鳥羽2-12-24
企業HP:https://www.senpokaku.com/

== 編集後記 ==
 実際にスイートルームのお部屋を拝見し、まさに3世代が宿泊するのにぴったりだと感じました。大学卒業後5年間、様々な人と繋がりを持ち、広い世界を見てきた谷口さんならではの旅館経営の一端を垣間見ることができました。
 余談ですが、この記事を見た局職員が、早速3世代で行こうと両親を説得していました(笑)。これからも応援しています!


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