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【兆し 第1回】わが社、天下分け目のセキガハラにあり ~関ケ原製作所~

 今回は、岐阜県関ケ原町にあります「会社はみんなのもの」という信条を真っすぐに追求し、社員が全員主役で会社づくりに取り組む関ケ原製作所です。執行役員 経営本部 副本部長の安田知興さん、同じく副本部長の福本武彦さんにお話を伺いました。

 このマガジンでは、VUCAの時代、社会構造や取り巻く事業環境の変化の「兆し」を捉えて、持続的な成長に向けて変化に対応している企業の取り組みをご紹介します。なお、企業の取り組みについては中部経済産業局が2024年9月に発刊した「兆しレポート第7回(テーマ:多様な価値観を有する若者など働き手の視点に立った「人への投資」拡充の兆しhttps://www.chubu.meti.go.jp/a32kikaku/kizashi/20240918/kizashi_report7.pdf)内でより詳細に紹介しています。


2018年ニューセキガハラフェスティバル
中国にあるグループ会社の社員も迎え、盛大に開催されました

1.御社のおしごと、教えてください。

――― どんなおしごと、されていますか。

 弊社は1946年に創業しました。メイン事業は油圧機器事業で、そのほか商船機器事業や創業期から続く鉄道機器事業など、計7事業を展開しています。

 油圧機器事業では鉱山機械に装着する大型油圧機器(シリンダー、アクスル)を作っています。また商船機器事業では一般商船向けの各種クレーンを、鉄道機器事業では鉄道の分岐器やレールのメンテナンス装置等を作っています。
                                                 
 「キラリと光るグローバルニッチ」を志しており、サブミクロン単位の精度が求められる精密石材製品から、大型製品まで、多種多様なオーダーメイド製品を展開しています。いずれも開発・設計に始まり、製造からアフターサービス、品質管理に至る一気通貫のものづくり体制が、弊社の強みです。

大型油圧機器(製品名:アクスル)

2.「会社はみんなのもの」

――― 創業の精神が今も受け継がれていると伺いました。

 創業者は「会社はみんなのもの」という精神を常に言葉にしてきました。
創業者の言葉通り、社員全員が会社を創り出し、また社員が成長することで会社の成長をもたらし、ここまで発展してきました。
 創業の精神は変わらず今も、社員に脈々と受け継がれています。

創業者 矢橋五郎

――― 具体的にはどのような取り組みをしていますか?

 「会社はみんなのもの」という理念のもと、社員が成長し、自己実現できる会社づくりを目指しています。具体的には、社員一人一人が自分自身で考え、主体的に行動できることを目標に、人への投資には特に積極的に取り組んでいます。

 例えば、経営陣が講師となり、次世代の育成を目指す「社長塾」と呼ばれる研修の実施や、一人出向による「武者修行」、他社人財との交流による「他流試合」などをとおして、実践経験を積む機会を提供するなど、教育制度を充実させています。

社長塾の様子。ノウハウを未来につなぎます。

 また、社員と社員の対話の場となる職場別懇話会の開催や地域住民の方と交流するための憩いの場の提供・イベント開催など、開かれた会社・働きやすい環境づくりにも力を入れています。

冬祭り2019の様子。餅つきをしているサンタは弊社の社員です。

3.セキガハラウェイ~私たち一人ひとりが自らを変えながら充実した会社生活を送るために~

――― 会社・社員の憲法「セキガハラウェイ」について教えてください。

 「セキガハラウェイ」は、創業の精神や、理念が生まれてきた原点を踏まえて、理念(ありたい姿、なりたい姿)、行動規範を規定しています。
 社員全員に配付し、日々読み合わせを行うとともに、各々が理念や行動規範に基づく目標を立て、その達成に向けた努力を行うなど、企業理念と日々の業務がつながるように取り組んでいます。

「セキガハラウェイ」の目次

セキガハラウェイの概要はこちらのウェブサイトからご覧いただけます。

――― 社員の方が主導で策定されたのですよね。

 はい、「社長塾」の第1期受講生のメンバー主導で策定しました。
そのため、自分事として受け止め、日々の実践のための道標となるよう、作成者自らの想いが込められています。

読み合わせの様子

――― 社員のみなさんの反応はいかがですか。

 やはり、社員自らの思いが詰まった「セキガハラウェイ」であるため、他の社員へも深く浸透し、各職場に幅広く波及しています。
 実際、若手社員に行ったアンケートでは、「セキガハラウェイ」の企業理念と自分の業務のつながりが分かったなどポジティブなコメントが多くあり、改めて「セキガハラウェイ」は先人の知恵が詰まったとても有益なものであると私たちも再認識しています。
また、各職場で特徴ある活動を自主自立的に展開するなど、実践にもつながっています。

 例えば、上司と部下は3ヶ月毎に1on1ミーティングを実施して、仕事の話題に限らず仕事外の話題でもコミュニケーションを図っています。
また、感謝の気持ちを記したメッセージをフロアに掲示し、社員間で共有しています。
 そのほかにも職場単位で自主的に判断して、職場活性化のための様々な取り組みを行っており、会社への帰属意識が高まっていると実感しています。

感謝の気持ちを社員間で共有(自主活動の一部)
サンキューの輪を広げよう!ジャンジャン言葉にしていこう!

4.天下分け目の関ケ原1600年

――― 関ケ原と聞くと、多くの人が関ケ原の戦いを思い浮かべますね。

 歴史好きの方だけに限らず、ほとんどの方が、関ケ原と聞くと関ケ原の戦いを思い浮かべるのではないでしょうか。
 実は、弊社は天下分け目の関ケ原合戦で諸将が陣を置いた歴史エリアに位置しています。
 周囲には関ケ原合戦の開戦地や決戦地、徳川家康が陣を置いた陣場野、島津の退き口で有名な島津義弘陣跡などがあり、古戦場の原風景を眺望・散策できます。
もしかしたら、歴史好きの方は、弊社近くにもお越しいただいたことがあるかもしれません。

ビフォー:関ケ原の合戦・布陣図
アフター:セキガハラ・キャンパス

――― 本社は、大学をイメージして、建設されていると伺いました。

 はい。セキガハラ・キャンパスとして、大学のキャンパスの中に工場や研修棟・社員食堂などがあるといったコンセプトで建設しました。
 約45,000坪の広大なキャンパス内には、そのほかにも、関ケ原の里山の生活の中に様々な美術作品が点在する「せきがはら人間村生活美術館」や地元産の今須杉を使用した木のぬくもりを感じるレストラン「未来食堂」、こだわりのスイーツと丁寧にドリップされた珈琲でほっと一息つけるカフェ「café mirai」などがあり、社員はもちろんのこと、地域住民の方との交流の場としても利用しています。

 また、一般の方も利用可能ですので、史跡巡りの合間などに是非お立ち寄りいただき、四季折々に輝きを見せる里山の風景や美術作品を、ゆったりとした時間の中でお楽しみください!!

せきがはら人間村生活美術館
未来食堂

5.100年企業に向けて

――― 今後の展望などについて教えてください。

 社員にとって仕事は「生きがい・やりがい、自己実現の場」であり、全員主役の経営を実践していきたいと考えています。
その取組みの一つとして、次期経営者や幹部候補生となりうる人間力と技術力を兼ね備えた次世代の人財育成に注力したいと考えています。

 具体的には社長塾メンバーの中から、さらに10名程度、メンバーを選抜してテーマを与え、経営層が定期的にアドバイスしながら、取り組んでいく実践的な教育を行います。また、外部出向や他社との人財交流、社内の革新的なプロジェクトへの積極的な起用も想定しております。
このように、社員が学び高め合い、自己実現を目指すことを社としても全面的にバックアップし、そのような場も積極的に提供していきます。

 「企業は人の集まり、人そのもの」という考え方に立ち取り組んできた人づくり、会社づくり、事業創造。人を中心に据えた弊社の経営理念は、どんな時代にも変えてはならない「ありたい姿」です。
 「人間ひろば」の理念のもとに育まれてきた企業風土を次世代に継承していくために、そして100年続く会社のために。
 私たちの挑戦は続きます。

インタビューの様子(執行役員 経営本部 副本部長 安田知興さん、同じく副本部長 福本武彦さん)

~ ★ ★ 企 業 情 報 ★ ★ ~


会社名:株式会社関ケ原製作所
代 表:代表取締役 矢橋英明
所在地:岐阜県不破郡関ケ原町2067番地
企業HP:https://www.sekigahara.co.jp/