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【きらり★vol.8】ロボットにトランスフォームする自動車、実在するのをご存知ですか? ~原田車両設計 代表取締役 原田 久光さん~

 タイトルに惹かれてたどり着いた皆さまへ、まずはこちらをご覧下さい。
(画像クリックで三精テクノロジーズ株式会社の「SR-01」プロモーションビデオへ)

 ロボットモードで歩くことができる点にこだわりを感じます。
 今回は「つくれないものはない会社を目指す」をモットーにされている、
愛知県みよし市にあります原田車両設計の原田久光さんにお話を伺いました。
※ 動画の乗用人型変形ロボット「SR-01」は三精テクノロジーズ株式会社からの依頼でコックピットと外装を設計。詳しく知りたい方はコチラへ。


1.御社のお仕事、教えてください。

――― どんなお仕事、されていますか。

 当社は、1993年に私が創業しました。主に自動車産業向けに自動車部品設計からソフトウエアまで受託開発を行っており、ファブレスではありますが、一部自動車や航空機部品の量産も行っている会社です。

 量産車部品の設計だけでなく、モーターショーに展示されるようなコンセプトモデルやパーソナルモビリティ、月面探査車の試作車両、乗用人型変形ロボットの開発に関わった実績があり、変わったところでは、テレビ番組の企画で巨大スケートボードを作ったこともあります。完全に赤字でしたが(笑)。
 当社のホームページ(https://www.hvd.co.jp/works/)を見ていただければ、多種多様なものづくりに関わっている会社だとわかっていただけると思います。

当社が設計等に関わった 月面探査車の試作車両(トヨタ自動車株式会社)
当社が設計等に関わった乗用人型変形ロボット(三精テクノロジーズ株式会社)
TV番組の企画で当社が制作した巨大スケートボード(テレビ東京)

――― 自動車以外にどんな業界の仕事をしていますか。
 量産品ということでは、航空機シートの部品を作っています。航空機産業に参入したきっかけは、大手航空機メーカーが防衛部品のコスト削減のために自動車業界のサプライヤーを探していて当社に声がかかりました。その後、JISQ9100を取得して、民間航空機のシート部品の量産を行っています。

 最近では自動運転車両開発やベンチャー企業のものづくりの設計開発にも関わっており、JAXA「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」にも採択され、宇宙分野にも関わり始めました。
 また、より積極的にスタートアップが困っている「ものづくり」のお手伝いができないかと考え、昨年愛知県に誕生したSTATION Aiに入居しました。
 今後は航空、宇宙、スタートアップ支援に力を入れ、2030年には売上高30億円を目指しています。(現在は15億円前後)

自動運転車両(株式会社ティアフォー)

2.鯨の会話を研究していたのに・・・

――― どうしてこの会社を作ろうと思ったのですか。
 
 元々海が好きで、東海⼤学の海洋学部で鯨が遠方の仲間と会話していると聞いて、くじらやイルカの研究をしたいと思っていました。卒業したら⽔族館に就職し研究したいと考えていましたが、全国の水族館で募集がまったく無く、仕方なく地元に戻って設計会社に就職しました。

 その会社からトヨタ系の部品会社に派遣され、ランドクルーザーなどのワイヤーハーネスの設計をしていましたが、30歳を過ぎてくると、正社員ですが派遣という働き方に夢と希望が持てず、いつか信頼され仕事を自分の会社で任せてもらい開発請負ができる仕組みを作りたくて、1993年に個人事業で創業しました。
 最初は私ひとりで始めましたが、5年ほど経って昔の仲間が一緒にやりたいと言ってきたため、1998年に5人ほどで法人を設立しました。

人間に例えると神経や血管とも言える重要な部品、ワイヤーハーネス

 ワイヤーハーネスの仕事を請け負うにはクルマ全体の設計に必要な特殊なCADのライセンスが必要でしたが、創業間もない私がライセンスを持てたのは、派遣時代にお世話になったお客様からの支援によるところが大きいと思います。
 トヨタ自動車が開発した専用の統合CADのライセンスを持っていたおかげで、大手ワイヤーハーネスメーカーから社員教育を任されるようになり、順調に仕事が増えて、2008年のリーマンショック前には社員数100名の会社に成長することができました

3.当局との関わり、教えてください

―――当局とのなれそめも含めて、関わりを教えてください。

 リーマンショックの際、ほぼ100%自動車に依存していた当社は大きく影響を受けました。そこで自動車以外に何かできることはないかと模索していたところ、中部経済産業局が企画した医療従事者と製造業のマッチング事業を見つけ参加したのが局を知ったきっかけです。
 この事業を通じて、名古屋大学や国立長寿医療センターや名古屋市立大学の先生と出会い、医療機器の開発に取り組みました。結局、医療分野は業界特有のハードルが高く、採算が取れなかったため断念しましたが、この取組を機に、名古屋大学の産学連携部署とのお付き合いが始まり、自動車以外の開発でも貢献できることを知りました。

 当社の設計技術が自動車以外にも使えるということに気づかされたのはリーマンショックとこの事業のおかげだと思って感謝しています。その後は、冒頭にも話したように、様々な設計開発に取り組むようになりました。

――― 経営力向上計画※の認定を受けられてますね

 経営力向上計画について知ったのは、名南経営コンサルティングからの紹介です。ちょうどCAD等への投資による設計開発部門の強化と3Dプリンターや試作設備への投資を考えていて、何か助成金等の支援策はないかと探している時期でした。税制優遇措置を利用して、最新設備への投資ができました
 結果として、2023年に「事業再構築補助金」やJETROの「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」、2024年はJAXA「革新的将来宇宙輸送システム研究開発プログラム」にも採択されました。これにより自動運転事業や3Dプリンター販売事業への参入することができました。
「経営力向上計画」とは、人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、会社の経営力を向上するために実施する計画で、国に計画が認定された事業者は、税制や金融の支援等を受けることができます。詳しくは以下をご覧ください。
(経営力向上計画のチラシ画像)

https://www.chubu.meti.go.jp/c13keiei/keieikyouka/keieikyouka_gaiyo.html

4.お酒を造ったり、ケニアのフリースクールを支援したり

――― ショールームにお酒が飾ってありましたね

 あれは当社の子会社で造っている食後酒です。自動車部品の設計会社がお酒を造っているのって不思議ですよね。

 当社の新たなビジネスとして自社開発の製品を創るために、2020年にブランド開発室を設置し、新しい分野のビジネスを考え始めました。
 初めのうちは新規事業が生まれませんでしたが、アート思考やU理論を勉強していく中で、地域貢献という当社の理念から、メンバーの1人が農業大学出身で醸造学科を出ていたこと、愛知県が昔から醸造文化が根付いていたこと、私自身料理が趣味だったことなどから、三河地域のみりんに目を付けました
 料理研究家のアドバイスを受けながら、みりんと米焼酎ほうじ茶をブレンドして熟成した食後酒を開発し、2022年に別会社(株式会社HERIX)を設立して「YANAGI」ブランドとして販売を始めました。 

――― 社会貢献活動にも熱心ですね

 利益の5%を社会貢献活動にあてると決めています。国内ではフードバンクやフードドライブの支援、発達障がいのアート活動支援、こども食堂支援などを行っています。
 また、ケニアのスラム街にあるフリースクール「マゴソスクール」の運営支援を行っています。

ケニアにあるマゴソスクール
(http://magoso.jp/magosoより引用)

 マゴソスクール支援のきっかけは偶然の出会いです。2019年5月、鹿児島でホテルの壁画を描くアーティストのミヤケンさんと出会う機会があり、そこで壁画を描いた話を聞きました。
 ちょうど8月にJICAの南米プログラムで知り合った方に会うためケニアに渡航する予定になっていましたので、壁画を観たくなりました。その時偶然にも日本に帰国中のマゴゾスクール設立者、早川千晶さんを紹介していただき、マゴゾスクールを訪問することになりました。

 実際に現地を訪問し、その活動に感動して私自身も何か役に立てないだろうかと思い支援を決めました。会社として今年はマゴソスクールの卒業生4人の高校生の生活費や学費の支援を行っています。

5.これからも、きらり、かがやくために

―――御社にとっての かがやく、’きらり’はなんでしょうか。

 わが社にとっての’きらり’は、「誠実さ」=「Integrity」ですね。当社のパーパス、ビジョン、ミッション全てに「誠実」という言葉を入れています。社会に誠実なつながりを拡げ、社員、お客様、下請けさん全ての幸せ(三方善し)を追求していきます。
 ”さあ、ミライを設計しよう!”

~ ★ ★ 企 業 情 報 ★ ★ ~

★ 原田車両設計 紹介CM(公式YouTubeチャンネル)

★ 数字でみる原田車両設計 (CADライセンス数や社風などをご紹介)


~~~ 会社情報 ~~~
会社名:原田車両設計株式会社
代 表:代表取締役 原田 久光
所在地:愛知県みよし市三好町中島24中島ビル
企業HP:https://www.hvd.co.jp/

== 編集後記 ==
 地方の中小企業とは思えないほど、大手企業から頼りにされていて、今まで設計等に関わった事業を聞いているだけでワクワクする会社でした。
 今後もワクワクするモノを世に生み出してください。


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